現存する原猿の生態について。原猿の祖型を比較的留めた種といわれる「グレイネズミレムール」(ネズミキツネザル)、ほとんど真猿に近い「ワオレムール」(ワオキツネザル)の特徴。
マダガスカルに生息するレムール(キツネザル)に関しては、外敵や競合種が少ない環境ゆえに、進化の途上で特殊化したと思われる要素も多いが、進化史上の原猿を推定する参考にもなる。
■グレイネズミレムール
[形態、生態上の特徴]
現生の霊長類の中で最も小さく、体長約12.5cm、体重50~90g。夜行性。食物は主に無脊椎動物(昆虫など)、果実などの植物、カエルやカメレオンなどの小型脊椎動物。基本的に単独生活。
[オスメス関係と集団形態の特徴]
オスの行動域は約3.2ha、メスの1.8haより広い。地域の中心部に大きなオス(セントラル・メール)が広い縄張りを持ち、その中に数頭のメスが縄張りを構える。小さいオスたちはメスがいない(少ない)周辺部に。首雄集中婚の原型をなすが、オスメス同居には至っていない
夜間の活動中は単独だが、昼間休息するときは、メスたちは4頭程度のグループを形成。メスは自立していない子ども、自立した娘とは親和関係を結ぶ。オス同士は基本的に排他的。
メスの発情期間は2~3日程度。オスの性闘争は日長変化とメスの尿成分によって誘起される。飼育下で複数のオスメスを一緒にすると、オス同士の性闘争の末、最も優位のオスだけがメスと交尾し、他のオスは発情しない。優位オスの尿に含まれる成分が劣位オスの性的活動を抑制する。
父親は交尾後単独生活に戻り、育児には参加しない。
■ワオレムール
[形態、生態上の特徴]
ワオレムール:体長約42.5cm、体重3~3.5㎏。昼行性。食物は果実、花、木の芽、葉、樹皮などの植物、小動物など。数~20数頭の群れで生活。樹上だけでなく地上を歩くことも多い。
[オスメス関係と集団形態の特徴]
オスメスの体格差はなく、集団内では「メス優位」。メスはオスが先に見つけた食物や休憩場所を取り上げたりオスを脅したりかみつくこともあるが、その逆はない。メス優位の理由は、外敵圧力の少ない生存環境ゆえに生殖課題が優位となったからと考えられる。
複雄複雌の「母系血縁集団」を形成。オスは3才頃になると2~3頭が連れ立って他群れを訪問。先住オスに追い払われたりしながら、長い時間をかけて移籍する。メスは生殖年齢に達しても群れに留まる。
オス間に序列があり、最優位オスの近くにメスがいることが多い。劣位オスはメスからやや離れた位置にいるが、交尾期でなくてもオス間の序列闘争は行われる。互いに手首にある匂いの分泌線を尾に何度もこすりつけ、その尾を頭上に振りかざして左右に激しく揺する。匂いは性ホルモンを含んでおり、互いの成熟度、強さを示す信号として使われると考えられている。
(メス間にも序列があり、家系ごとに決まっているが、闘争で逆転することもある)
メスの発情期間は短く、数時間~10数時間程度と言われる(24~48時間という説もあり)。この期間はオス同士はメスの獲得をめぐって一斉に激しく闘う。(一番になったオスがメスに交尾を迫るが、メスが気にいらなければ再び戦いが起こるという話もある)
オスの体重は交尾期にピーク(通常の1割増し)となり、交尾期が終わるともとに戻ることからも性闘争にエネルギーをかけていることがわかる。
同じ群れの個体同士は、通常は毛づくろいなどを通して親和的関係を保っている。
異なる群れ同士の同類闘争、縄張り境界で隣接群に出会うと、互いに一列に並んで相手をにらみ、オスもメスも盛んに匂いづけをする。緊張の中でしばしば小競り合いが生じるが、オスはオスとメスはメスとやり合う。
※ワオレムールは学問的には「原猿」に分類されるが(マダガスカルのサルは全て原猿に分類されているだけのことだが・・・)、実態的には「真猿」と考えた方がよいと思われる。
※参考
杉山幸丸編「サルの百科」データハウス
現存する原猿類の多様性についてhttp://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=28857
原猿の棲み分け http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=28941
闘争の結果としての『棲み分け』 2 http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=29094
マダガスカル島にも「真猿」がいる!? http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=29370
岩井裕介
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